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社会心理学では、社会的態度の類似性と好意の関係が研究されています。支持政党や宗教、戦争への態度です。 これらの態度が似ていれば似ているほど好意をもつことが、アメリカの社会心理学の実験で照明されています。 しかし、日本ではつき合いの初期にいきなり支持政党についてなどの話はしないでしょう。意見が対立することで嫌悪感が生じないように、相手に合わせるようにします。ですから、社会的態度が同じかどうかは、つき合いの初期にはわからないはずです。 ということは、態度の類似している人を好むといっても、日本の場合、アメリカの研究でいうような、個人にとって重要な価値観や信念の類似が問題になるのではなく、話題にしやすい出身地や出身校が同じであることや、趣味や好きなスポーツなどが類似していることが重要な役割を果たすといえるでしょう。 信念や態度とは対照的に、生まれ育った土地や出身校が同じかどうかはじつに明確ですし、疑う余地のないものです。それに態度や信念は変わるかもしれませんが、出身地や出身校は変わることはありません。 その意味で同一性の安心感は態度や信念が同じということの比ではないのです。この安心感、安定感こそ、心の底から好意を生じるベースなんのです。 年齢も異なり、しかも初めて会った二人でも、同郷であるという意識は、互いに旧知の親しさを感じさせるものです。未知の人に対しては不安感や警戒感を抱きがちですが、同郷者には防衛的感情が生まれないため、初めから親しく感じられます。 人生初期の原体験の同一性への思い入れは一体感を生み、それが好意につながるのです。 ★ 嫌いな人が、友人を増やしてくれるという不思議な心理 「嫌いな人とつき合うことによって、仲間が増えます。友だちを増やしたいのなら、嫌いな人とつき合うことです」 というのは、人の心理は対比によってその関係を判断しますから、いつも仲の良い仲間だけとつき合い、一緒に仕事をしていると、この対比基準が仲間内になり、仲間の間の小さな差に目がいくようになります。 仲の良い仲間でも、互いにイヤな点や気に入らない点はあります。 また、人が3人寄れば派閥ができるといわれるように、その仲間内にも好き嫌いの程度の差があり、サブ・グループが意識されるようになります。つまり、仲間内を基準にするので、仲間内で比較して好き・嫌いを対比し、分けていく心理が働き始めます。 こんなとき、嫌いな人と仕事をしたり、しばらく一緒につき合わなければならなくなったりします。 すると対比の基準が大きく変化します。この嫌いな人を含めた好きから嫌いまでの幅で好悪の比較をすることになります。 「この人たちに比べたら、自分たちの仲間内の好き嫌いなど、目くじら立てて区別するほどのことはない」 そう思うようになるのです。 比較の対象が嫌いな人たちとなるために、自分たちの仲間のよさが改めて確認される、ということになります。 嫌いな人とつき合うと、こんな効用もあり、この心理作用が仲間意識を育てるのに役立っているのです。
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